「タクミくん、こういった可能性もあるんじゃないでしょうか」
担任の先生がプリントアウトしてくれた文書の見出しは
「HSPとは」
HSP(Highly sensitive Person)とは、とても敏感な人の意。
アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱してから多くの人の反響を呼んだ概念です。
5人に1人の割合と言われるHSPですが、やはり世界は大多数の非HSP仕様。
HSPにとっては過酷な場面も少なくありません。
敏感すぎる当事者が子どもの場合はHSC(Highly sensiteive child)と呼ばれます。
不登校や別室登校など、集団生活にストレスを抱えているお子さんの中には、敏感という特質を持ったお子さんも多いのではないでしょうか。
HSCって、どんな子ども?
担任の先生からプリントをいただく以前に、実は我が家の本棚には数冊のHSP関連の書籍がありました。
というのは、私自身、HSPの特徴を多く持っていたからです。
残虐な映画や画像を観ると恐怖が頭から離れなくなる
怪我をした人、注射を打たれている人など、他の人が痛みを感じている場面に遭遇すると自分も痛みを感じる
あるツボを刺激する小説や映画、時によっては音楽で涙が止まらなくなり、時には号泣
大きな音が苦手で爆竹や運動会でのピストル音が恐怖……
自分の特性を受け入れきれなかった思春期~二十代後半は、摂食障害にはまり込んでしまったりと、今思えばなかなか危うい、綱渡り状態の毎日でした。
お子さんがHSCの可能性は、アーロン博士のホームページで診断できます。
hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsc.html
また、アメリカでは次の4つの性質に当てはまる者がHSPとされています。
HSPが持つ4つの性質「DOES」
D=深く考える(Depth of processing)
HSPの脳は、情報を深く処理する部分が活発になっている。
1を聞いて10を知り、人の気持ちや空気を読む能力に長けている。間違ったことをするとどうなるかがよくわかるので、慎重なところがある。
一例として、数人で大皿料理を食べるときに「これを何人で分けるのか、後から来る人の分を取り分けておく必要があるか、遠慮している人はいないか……」などを瞬時に考えてしまい、動作が一歩遅れてしまうこともある。
0=過剰に刺激を受けやすい(being easily Overstimulated)
物事に対して受ける刺激がHSPではない人と比べて強い。
人の感情や雰囲気だけでなく、暑さや寒さの変化に弱く、痛みや刺激を受けやすいなど、体の内外のことに敏感。小さな音でも聞きつける、鼻がきく、チクチクした肌触りが苦手など、感覚的に敏感であることも多い。
刺激が多い時には過敏で動揺しやすくなる。何に対して敏感かはそれぞれに違いがある。
E=共感力が高く、感情の反応が強い(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)
脳科学による研究で、HSPは他の人が何かをしたり感じているのを見ると発火して、あたかも自分が同じことをしたり感じているように感じる神経細胞「ミラ-ニューロン」の活動が活発であることが示された。
共感力が高く、つらい思いをしている他人の気持ちが手に取るようにわかったりする。直感が鋭い、感情移入しやすい、想像力が豊か、正義感が強い、完璧主義などの特徴がある。不公平なことが許せず、些細な間違いに強く反応することも。
S=些細な刺激を察知する(being aware of Subtle Stimuli)
人の髪型や服装、場所の小さな変化や、人が自分を笑ったこと、逆にちょっとした励ましなどにもよく気づく。体内の刺激にも敏感で、薬が効きやすいこともある。少しの刺激で痛みを感じ、何か悪い病気ではないかと不安になったりする。HSCの子育てハッピーアドバイス(明橋大二)
https://mazecoze.jp/diversity/5198 より
アローン博士のチェックリストでは、タクミのは9割当てはまりました。
特に苦手な食べ物は匂いだけで吐き気を催す
人混みや賑やかな場所、例えばお祭りや遊園地は大の苦手
痛みや不快感にとても敏感
赤ちゃんの頃までさかのぼれば、抱っこをやめると泣き出すので、2歳頃まではほぼいつも抱っこのカンガルー状態。
当時仲良くしていたママ友に
「私だったら発狂するわ」
と言われるほどのべったりちゃん
タクミ自身も自分の扱いに疲れ果てていたのかもしれません。
HSCと非HSC
HSCの特徴をほぼ網羅しているタクミとは対照的な妹。
生まれたときから何度
「こんなに子育てが楽でいいんだろうか」
と、変な心配をしたかしれません。
ほぼ毎日通っているスポーツ関連の習い事の前の、ほんの少しのすきま時間も外遊びに飛び出していく下の子。
対してタクミは疲労感やストレスからの回復にたっぷりの時間が必要です。
HSPやHSCの疲れやすさは、HSP独特の脳の働き方によるもの。
訓練や気の持ちようで鍛えられる類の性質ではありません。
HSPの人たちの脳の中では、恐怖や不安などをつかさどる偏桃体に血流量が多く、どうしてもネガティブ思考になったりストレスを強く感じてしまうそうです。
HSCが健やかに暮らすには
多くの情報を鋭敏に研ぎ澄まされた感覚で目いっぱい取り込んでしまうHSC。
適切な養育によっては、偏桃体の過剰な働きを促す遺伝子をオフにすることもできるそうですが、「これから」を考える上で大切なことは、HSC自身がHSCである自分の特性を知り、愛しみ、ケアして付き合っていけるようになること。
★自分の状態を把握する
★踏み込まれ過ぎないように、外界との境界線をしっかり引く
★周囲の期待に応えることではなく、自分の心地よさを最優先に考える
★衣食住を快適に。音、匂い、肌触り、色、など、感覚的にも自分が好きなもので自らを守るように整える
イメージとしては、小さな赤ちゃん状態の自分をお母さんになった自分が大切に守り育てていく感じかな、と思うのですが、いかがでしょう。
ちなみにとても敏感な性質を持つ個体は人間だけではなく、動物の世界にも同じくらいの割合で存在するそうです。
知らない人にかまわれたり犬の遊び場で知らないわんこに取り囲まれると、緊張のよだれでお風呂上がりのように顔じゅうびしょびしょになってしまう我が家のわんこも、実はHSDかも…
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