小学校高学年頃から始まる第二次反抗期。
親子で家にいる時間が長くなる夏休みは特に、
「堪忍袋の緒が切れた!」
と、ついつい反抗期の子ども相手に切れてしまった、あるいは切れそう、
そんなお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回ご紹介する『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』は、そんなお母さんにおススメの一冊です。
口を開けば憎たらしいことばかり…
あんなに可愛かったのに…
そんなため息が
「まあ、仕方ないよね、そういう時期だしね」
という仏様のような微笑みに変わるきっかけになるといいな、と思います。
著者 椰月美智子(やづきみちこ)さんのこと
2002年第42回講談社児童文学新人賞を受賞して『十二歳』でのデビューから、
『しずかな日々』『明日の食卓』『るり姉』と、数多くの児童文学作品、小説を発表。
1970年神奈川県生まれの作家さんです。
<昔はおれと同い年だった田中さんとの友情> ストーリー
物語は小学5年生の拓人(おれ)と二人の友達を軸に繰り広げられます。
三人は、ふとしたアクシデントからけがをしたおじいさん、田中さんの身の回りのお世話をすることになります。
最初はぎこちなかった三人と田中さん。
ですが、次第にあたたかな絆が生まれ始めます。
そんなある日、田中さんの悲しい過去を知った拓人はある計画を実行することを心に決めるのですが…
<昔はおれと同い年だった田中さんとの友情>
田中さんといると、ちょっと前の自分に戻れるような気がするのだった。(中略)そんな当たり前のことを、何も考えずにたのしめたとき。素直で明るくていい子だったおれ。
今のおれは少しややこしい。(中略)なにより、自分が自分を持て余していて面倒くさいんだ、本当に。
(中略)転がって遊んで、それがぜんぶだったとき。あの頃から、まだ2,3年しかたっていないのに、おれたちはずいぶん変わってしまった。(『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』より)
拓人たちが話す学校での出来事のあれこれを 田中さんはアドバイスも批評もすることなく、ただ楽しそうに耳を傾けてくれます。
反抗期、子どもが感じているイライラは、思い通りにならない外側の世界に対してだけではなく、イライラしている自分自身に対しても向けられているのでしょう。
この本を手に取ったきっかけは、
「ママが好きそうな本借りてきてあげたよ」
と、まさに最近反抗期が始まった、毎日イライラ三昧の娘に手渡されたことだったのですが、もしかしたら
「今自分はこんな状態なんだよ」
とのメッセージも含まれているのかな、とふと思いました。
<昔はおれと同い年だった田中さんとの友情> 距離のある関係からだからこそ届けられるものがある
田中さんという存在は、拓人たちに届けられたギフトでした。
イライラや不安定感に揺らぐ毎日から、田中さんとの出会いを通して拓人はその先の世界への出口を見つけます。
反抗期は、家族や親といった、今まで自分と一番近しかった関係の外に出る時期。
だからこそ、田中さんのようなワンクッション置いた距離の関係から届けられるものが大きく響く時期なのでしょう。
<昔はおれと同い年だった田中さんとの友情> 本を閉じて
読み終えて、ふと浮かんだのは私自身の反抗期の頃の記憶でした。
父の体臭
母の言葉尻
思うようにできるようにならないイロイロ…
イライラのきっかけは世界にあふれていました。
思い出したら「ああ。こんな感じだったな」と、子どもの八つ当たりにもちょっとした懐かしさを覚えたくらいです。
記憶の底に目の前の子どもそっくりのかつての自分を見つけたら、
成長しようともがいている子どもがまた、愛おしく思えるかもしれません。
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