HSCのお子さんと過ごしていると、
「え!そんなことが怖いの?」
と、びっくりしたりもどかしく思ったりって、よくあるのではないでしょうか。
年齢が低ければ低いほど刺激に対する感度も高いので、恐怖の表現も心そのまま、
ストレートなものになりがち。
けれど、少しずつこの世界に慣れ、安心感を持つことによって恐怖は和らいでいくんだな、と、我が家のHSC、タクミとの日々の中、感じたエピソードを紹介させていただきます。
<HSCの風景> ヒメオドリコソウが怖い
ヒメオドリコソウってお花、ご存知でしょうか。
春のはじめ、道端や河川敷に小さく群を成して紫色の小さな花を咲かせる草です。
タクミが初めてこの花の名前を知ったのは小学一年生の春。
お友達のYちゃん親子と私とタクミの4人で川沿いを散歩していた時、Yちゃんのお母さんが教えてくれたのでした。
しかしその散歩後、このヒメオドリコソウを見かけたときのタクミの恐怖の表現はすさまじいものに。
母親の私も思わず恐怖を感じるほどでした。
ある時、妹にお土産にとヒメオドリコソウを手渡され、大声を上げて部屋から飛び出してしまったこともありました。
道端に咲いているヒメオドリコソウから一生懸命目をそらそうとしている時の顔色も青くて
「こんなに小さな、可愛い名前の花なのに」
と、心底わけがわかりませんでした。
<HSCの風景> ヒメオドリコソウ、恐怖のわけ
時は流れ、タクミは高校生。
先日一緒に犬の散歩に川沿いの土手に出かけた日のこと。
隣を歩いていたはずのタクミがいなくなっているのにふと気が付いて振り返ると、
なんと、しゃがみ込んで、ヒメオドリコソウを撮影しているではありませんか!
タクミは写真撮影が趣味で、散歩のときにはたいていカメラを持ち歩いています。
恐る恐る近づいていて
「ねえ、その花怖くない?」
と尋ねると
「うん、怖くないよ」
とにっこり。
「すごく怖がっていたよね」
とまたまた恐る恐るの私に
「この花、夜になると踊るんだよってYちゃんのお母さんが言ってたでしょ。
その話が怖くてさ」
私はそんな話をしたことさえ記憶にありませんでした。
夜が更けて、一本、また一本と小さな日本人形のような白い顔のお姫様に変化していくヒメオドリコソウの群舞…
タクミには超ド級のホラー映画の映像のように突き刺さるストーリーだったのでしょう。
<HSCの風景> 少しずつ、一つずつ
HSCのお子さんは「無理して頑張る」ことや「やる気や体力など、力業で乗り切ること」は決して得意分野ではないでしょう。
小さなことでびくびくしてしまう場面も多いので、「自己肯定感の低い子」とみなされて、お子さん、親御さん、ともに自信を無くしてしまうこともあるかもしれません。
けれど思うんです。
少しずつ、一つずつ、大丈夫なんだってことを体験、納得することによって、
たくさんあった怖いことや嫌いなことの中からも、平気なこと、大丈夫なことに変化していくものもあるんだなって。
血筋のいい競走馬が疾走する姿は美しい。
でも、人のあまり来ない牧場の片隅で、のんびりとひっそりと味わうように草を食むポニーに心を締め付けられるような愛おしさを感じることもある。
HSCと過ごすひと時に、ここは天国なんじゃないかって多幸感をふと感じてしまう親御さんて、実は少なくないのではないでしょうか。
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